荒木飛呂彦『ジョジョリオン10』集英社、2015.8
広瀬康穂のスタンド能力、「ペイズリー・パーク」がここにきてグッとまた重要度を増してきていている。
途中#40の冒頭に挿入される主観的なスタンドの説明が良くて、選択肢を示してサポートしてくれる存在であるとともに、自分で選び取るという、運命に対する態度とでもいうべきものを示している。これはずっと荒木飛呂彦=ジョジョが大きく主題にしていることだろう。『スティール・ボール・ラン』の大統領の能力の系譜、『ストーンオーシャン』のプッチ神父の系譜であると思える。と、同時にSBRの大統領でグレッグ・イーガンの『宇宙消失』を意識したのだけど、彼女にもあの「病院から消えた女性」を思い出させるものがある。
康穂のこの後のドラマは楽しみだ。心なしかこの巻は『ストーンオーシャン』に絵のタッチが戻っているように思う、というのは錯覚だろうか。
子供が土壇場で勇気ある振る舞いをする、というのも伝統だなあ。荒木飛呂彦の登場人物は正しくあろうという信念を根で持っていて、善玉であろうと悪玉であろうと(「善玉」、「悪玉」という古典的な概念を捨てずに更新しようとしているところが凄いと思う)、敬意を表せるような人物が大半なのが良い。
岩人間が複数いる。柱の男との相似。SBR以降、とくにこのジョジョリオンは過去シリーズに対するオマージュがはっきりと入っており、自己模倣に陥るギリギリのところだなあ、と、ハラハラして毎回読んでいるのだけど、今回はどう出るだろう。
今更ながら、あまり杜王町おもしろロケーション案内の部分を期待しないほうが良いだろう。それなら4部があるのだし。
完結していないものを中途で感想書くのも難はあるけど、ジョジョは完結を待たずにリアルタイムで追っていきたい数少ない作品だ。
STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 24 (ジャンプコミックス)
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ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン 17 (80)
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