godspeed you! black emperor / あるいは、三拍子の宇宙 その2
その1
からのつづき。
2003年にgodspeed you! black emperor(gy!be)は活動を休止させた。ブッシュとそのイラク戦争を、「音楽の力」で止めようとしたが、無力だったことに失望したからだ、とも伝え聞いている、先にも言及した、活動休止前最後のアルバム、
- アーティスト: Godspeed You Black Emperor
- 出版社/メーカー: Constellation
- 発売日: 2002/11/19
- メディア: CD
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の裏ジャケはこのようなものだ。
このアルバムに払われた金が、どのように軍需産業に流れていくか。それを示したフローチャート図である。
さらにインナージャケットにも
このようにメッセージが記されている。gy!beはそれまで、自らの顔写真さえ撮らせず、商業誌のインタビューにも一切答えないばかりか、あくまでも「表現」「作品」のみで世界に切り込んでいた。音とジャケットのアートワークとライヴの演奏とそこでの16mm実験映画フィルムの投射のというファンダメンタルなバンドであったのだが、この悲壮感は何だろう、と、このアルバムリリース時に思ったことを覚えている。
ただ、このメッセージには震えたことも事実ではあった。
ここにもまだ当時のメッセージが載っている。日本盤CDの帯にも訳出されたメッセージが載っている。
"u.x.o."とは不発弾であり、地雷であり、クラスター爆弾である。”yanqui”とはポスト・コロニアル帝国主義であり、国際的警察国家であり、多国籍企業の寡頭政治である。ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーは共謀者であり、罪人であり、抵抗勢力である。このニューアルバムはただの音楽である。
たとえメッセージや意味があったとしても、それを言葉で説明することを拒んで来た彼らのこの行動を、そこまで危機感を持っているのだという表現とみなすか、限界とみなすか。
はたして、このアルバムのリリースされた2002年の翌年、2003年にgy!beはいったん活動を休止した。
その報を聞いて、当然凄く残念だった。
しかし、彼らは複数のサブユニットを作り、活動してもいた。その中でも、一番耳に届いてくるのは”a silver mt. zion”系の音だ。gy!beはヴィーカルを一切入れないが、このバンドではヴォーカル曲もある。「系」というのは、このバンドはアルバムを出すたびにバンド名をマイナーチェンジしてくるから。
中でも
Horses in the Sky by Constellation 【並行輸入品】
- アーティスト: Thee Silver Mt. Zion Memorial Orchestra
- 出版社/メーカー: Constellation
- 発売日: 2005/04/05
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このアルバムは凄く気に入っている、1曲目の”GOD BLESS OUR DEAD MARINES”の絞り出すようなヴォーカルに唸った。
God Bless Our Dead Marines (LIVE, GREAT ...
God Bless Our Dead Marines (LIVE, GREAT ...
2つに分かれているが、歌詞の字幕付のライヴ映像。最近初めて見つけて感動した。
他にも、Esmerineなど魅力的な活動がある。
だが、やはりその渦の中心はgodspeed you! black emperorであることは私にとって変わらなかった。
2010年末、gy!beがライヴ活動を再開したらしいという報を知る。そして、2011年2月末に最来日公演を果たしたのだが、悔しくも当時そのライヴに私は行くことが出来なかった。
翌2012年、いよいよ音源も発売された。
Allelujah! Don't Bend! Ascend!
- アーティスト: Godspeed You! Black Emperor
- 出版社/メーカー: constellation
- 発売日: 2012/10/16
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もはや、iTunesで落とすことも多くなったのだが、gy!beの作品はジャケットワークも含めてのものであるという認識がとりわけ強いので、CDを買う。いつも紙ジャケで、ビニールを剥がし、中身はどんなんだろう?と見る瞬間から始まっているのだ。そしてぼんやりとアートワークを眺めながらデッキに入れる。おお、これは三拍子ではない。もちろん、以前からそうでない曲もあったのだが、gy!beのキラーチューンは軒並みワルツのビートだったので、代名詞かと思い込んでいたが、十年ぶりに届いたアルバムをデッキに突っ込むとそこには知っているgy!beのサウンドだが、十年分の時間を経過した今のサウンドにもなっていた。「帰って来た」などという常套ではなく、またこうして今、音がある。嬉しかった。
その興奮の余韻の中、翌2013年には新譜を引っさげて(この常套もどうなのかとは思うが、そういうことなのだ)の再びの来日ライヴ。これは借金して行った。
東京2DAYSの1日目。先のニューアルバムの1曲目”Mladic”も当然プレイ。記憶のバイアスのせいと、初見という興奮もあって、2001年のときのような恍惚とした感動は得られなかったが、もう大人なので、PA前の会場中央やや後方でそこの空間全体の音を頂いた。LIQUIDROOMのサウンドは最高だった。このダイナミズムに、映画はどう太刀打ちすれば良いのだろう、悩む。
翌2日目に知り合いが行って、そこでは、”BBF3”をやったと聞いて、羨ましい、とおもったが、自分が見たのも十分良かったのは確かであった。
Karl Lemieuxによる三台の映写機マルチによる16mmフィルムプロジェクションも前回より、意識して見ることが出来た。概ね曲と展開によって決まったフィルムを掛けていることも確認できたし、後方で聞いていると、静寂の間に間に、映写機の走行音がかすかに聞こえてくるのもまた良い。
”Mladic”については、YouTubeに素晴らしいライヴ映像が上がっている。
Godspeed You! Black Emperor - Mladic - YouTube
そして、今年2015年EPも含めて7枚目の音源をさらっとリリースした。
Asunder, Sweet & Other Distres
- アーティスト: Godspeed You Black Emperor
- 出版社/メーカー: Constellation
- 発売日: 2015/03/31
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いつもの儀式、CDのビニルを破り、アートワークを眺めながら、Macに入れる。最後の行程だけ、十年前とは変わった。もう、当然良い、という感想である。どこか肩の力が 演奏者にも、聞き手にも抜けて来たようだ。特に後者だろうか。単に歳を取ったという言い方も出来る。
活動再開後のgy!beのサウンドは、休止直前のヒリヒリした感じは少なく、かといって、日和った軟弱なサウンドでもなく、彼らの今が素直に聞こえてくる。音楽で、本気で世界を変えようとして、出来なかった、これを挫折と呼ぶのだろうか。ドン・キホーテだったのか。何にせよ、それを経た彼らが、再び、他ではないこのgodspeed you! black emperorの名の下に音を日本の私にも届けてくれることは僥倖である。そして、命の糧になっている。
slow riotは失敗していていない。今も続いている。例えば、私の中で。